しばらく課題していると、肩にとんとん、と二回やわらかい衝撃が走った。
反射的に振り返ると、私の学校の制服を着た男の子が一人。
――なんだろう。 どっかで、見たことある?
印象は、薄い感じ。 予想していたスポーツ系男子とは違って、なんだか料理とかをしていそうなタイプ。
「話すの、初めてですよね。 あ、前失礼します」
落ち着く感じの、儚い声でそう言った彼は、私の前の席に腰を掛けた。
「あなたが、AIさんですか?」
「はい、そうです。 あ、自己紹介しますね」
人差し指をピンとたて、彼は優しく微笑んだ。
「お、お願いします」
私は完全に、自分のペースを乗っ取られている。
いつもなら私から話しかけて、それから距離をずんずん詰める。
今日は緊張しているのかな、私らしくない。
そんな私を見て、彼はふんわりと笑った。
「名前は、本間藍。 あー、それと、趣味は読書です。 次、来栖さんお願いします」
とつぜん話を振られ、少しだけ挙動不審になる。
「え、えっとですね、来栖ナノカです。 ナノちゃんとか呼ばれてます。 あいさんもよかったらそう呼んでください!」
勢いでそう言い、少しだけ後悔した。 「あだ名で呼んで」なんて、仲良くして下さいと言っているように聞こえてしまうかもしれない。
だけどあいさんは、あまり気にしていないようなので、私はホッと安堵した。