授業開始五分前のチャイムが鳴り、カヤちゃんは自身の席へと戻っていった。

 私が授業に集中できなかったなんてことは、言うまでもない。

まったく、快適な授業のためのAIじゃないのか。


「来栖、AIじゃなくてお前のせいだと先生は思うぞ」

「す、すみません!」


 先生からお叱りの言葉をいただき、それからは「しかたなく」だけれど、しっかりと先生の授業を聞いた「ふり」をした。

 頭の中はお花畑、というよりはお手紙でいっぱい。

―――どんな感じの方なんだろう。

 AIさんの手紙は手書きだった。 男の子らしいその字から、運動系かな、とイメージを浮かべる。

それから、文面を見るにはきちんとした人。 敬語とか礼儀をしっかりしてるひとは嫌いじゃない。


 そんなことを考えているうちに鬼の山田先生の授業が終わり、ほっと肩の荷が下りた。 それに、気分も爆上げだ。

なんてったって、ホームルームが終われば待ちに待った放課後。

本当は委員会の仕事をしなければならないのだが、そんなことは今の私にとってどうでもよかった。

それに、委員会の相方はカヤちゃんだ。 察してどうにかしてくれるだろう。 今回は甘えさせてね、愛するカヤちゃん。

そして「今回だけだぞー」と頬を膨らました心友に感謝をし、私は校門を出た。


 待ち合わせの場所、カフェテラスはこの辺りには一か所しかない。 学校から近いので、このまま直行するつもりだ。

いつもは「家に帰りたい」の一心で早まる足が、今日は「楽しみ」という理由でさらに早くなった。