人間離れした両者の動きはさらに激しさを増しており、金属の様な爪と剣のぶつかり合いは生々しい金属音が鳴り響き火花が飛び散っている。
 
 パッと見た感じはロンシィが押しており、人型の獣は徐々に後退している。
 
 人型の獣はロンシィが相手だと不利だと悟ったのか、標的をさやかに変更した。
 
 それを察知したロンシィだったが、判断が一瞬遅れたせいで蹴り飛ばされて、さやかから遠ざかる位置になってしまった。
 
 それを好機と判断した人型の獣はさやかに切りかかろうとする。
 
「待って、龍矢! お母さんが分からないの? もしかして恨んでるの? 恨んでるならそれでもいい、けど最後に話だけでもさせて欲しいの」

 さやかの声はもはや届いていない。爪が届く範囲まで接近している。
 
 その時、ロンシィは片方の剣を投げ飛ばした。
 
「《ペリアース》行けっ」
 
 投げ飛ばした《ペリアース》は意思があるのかの様な軌道を描き始めた。ロンシィは空いた方の手の指を空中でなぞるように描き出すと、その軌道にそって《ペリアース》も合わせる様に動き出す。
 
 人型の獣が振り上げた腕をさやかに振り下ろすと同時に《ペリアース》がその腕を切り裂いた。腕を切り飛ばされて悶絶する間にロンシィはさやかと人型の獣の間に再び割って入る。
 
 が、さやかがロンシィの足を掴んで懇願する。
 
「待って、殺さないで!」

「ふざけるな! ここで奴を見逃したら犠牲者が増える事になるんだぞ、人の命はお前如きの責任程度じゃどうにもならねえ。息子一人守れねえ無力な奴が囀るんじゃねえ」

「……っ……」

「それともアイツが誰かを殺すところが見たいのか?」

「それは……」

「アンタに出来るのはアイツの最後を看取る事だけだ」

「……どうしてこうなるの? 私は只あの子の母親になりたかっただけなのに……」

 ロンシィは悶絶しながら地面を這いつくばっている人型の獣の心臓を剣で貫いた。

 心臓を貫かれた人型の獣は力尽きるどころか身体が崩れ始めて灰になり、その灰すらも完全に消滅してしまった。

「クソッ、何も残らなかったか…… 警察が来る前にここから離れる。ついてこい」

 さやかは無言でロンシィについていく事しかできなかった。


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