「そ、そうですか。失礼しました。詳しい事は中でお話ししましょう。こちらへどうぞ」

 事務所の応接室に案内されたロンシィはさやかと向かい合って座っている。
 
 桜庭はお茶とお菓子を準備しており席を外している。
 
 その間に二人の無言の時間が流れるが、気まずい空気を察したさやかが何とか場を繋げようと口を開く。
 
「随分お若い方なのね。それにそのお名前から察するに中国系の方なのかしら? 随分と日本語がお上手なのね」

「依頼人とは言え、依頼内容と関係ない情報を漏らすつもりはない。自分の情報は特にな」

 さやかは先ほどの記者とロンシィのやり取りが気になったことが有ったので聞いてみる事にした。

「そうよね、ごめんなさい。一つ教えて欲しいのだけれど、記者さんの情報を知っていたのは何故かしら?」

「アンタに近づくであろう人物は事前に調査している。事務所の人間はもちろん交友関係に加えてさっきみたいな記者関係とかね。この世界は暴力も必要だが、それ以上に情報が命だからな」

 依頼内容とは関係はない――でもここまで事前段階で情報を集められる少年であれば追加の仕事を依頼する事で受けてくれるかもしれないと考えたさやかはダメもとでロンシィに自分の息子である『龍矢』の捜索を依頼したい事を告げる。

 その中でさやかは実家に問い合わせたが、龍矢を預けた父親に「龍矢は死んだ」と言われて門前払いにされた事。納得がいかず自分で探しているが中々進展していない事をロンシィに説明する。

「『死んだ』って言われてんのになんで納得いかなかったんだ?」

 もっともな内容の質問にさやかはバッグから一つの箱を取り出した。さやかが箱を開けるとそこから出てきたのはシルバーのイヤリングだった。
 
 イヤリングの先端には菱形の青い宝石がぶら下がっており、淡い光を放っている。
 
「これは対になっていてもう片方は『龍矢』に渡してあるの。『龍矢』が本当に死んだ時に私が持っている宝石から光が無くなるの。逆に『龍矢』に渡した方の宝石は私が死ぬと光が無くなる仕組みになってるの。だから『龍矢』は間違いなく生きてる」

 その話を聞いたロンシィは無言で応接室にあったテレビのリモコンを操作してテレビをつける。
 
 さやかの記者会見を唯一放送していない局に合わせると一つのニュースが流れていた。