ロンシィはおまけと言わんばかりに何枚かの写真をさやかに渡した。その写真には恋人と称される男性が別の女性とホテルに入っていく瞬間を捉えたものだった。
 
 さやかは薄々気付いていたのだろう、特に動じる事もなく半笑いでため息をついていた。
 
「それじゃ、世話になった。指定の口座に振り込むように桜庭さんに伝えておいてくれ」

 さやかが最後に挨拶をと振り返った時には既にロンシィの姿はなかった。
 
 事務所で一人になったさやかは息子の生死確認用として持っていたイヤリングを処分しようと箱から取り出した所、先端の宝石からは未だに淡い光を放っていた。
 
「うそ、どうして……」

 ◆

 ロンシィは孤児院に戻ってきていた。孤児院の裏には人の手で作られたようなお墓らしきものがあり、そこで手を合わせていた。
 
 すると、後ろから歩いてきた老人に話しかけられた。
 
「どうだった?」

「どうって?」

「話したんだろ?」

「そりゃ仕事なんだから会話くらいはするさ、けど()()はバラしてないから本人に気づかれていないと思うよ。()()()()同姓同名の奴がいたから利用させて貰ったけどね」

「名乗らなくて良かったのか?」

「じーちゃんこそ、人を勝手に殺しておいてよく言うぜ」

 そう言ってロンシィがポケットから取り出したモノは装飾品だった。シルバーのイヤリングに菱形の青色の宝石が括りつけられ淡く光っている。

 老人は少々呆れながらも少し微笑みながら「まだ持ってたのか…… まあ、お前の持ち物だからどうするかはお前にまかせるがな」と言ってロンシィの頭を撫でくり回していた。

 向こうから言われれば隠すつもりはないが、こちらからわざわざ言うつもりもない。
 
 それよりも今回も組織の事を掴めなかった方が問題だった。幼馴染の事を考えると腸が煮えくり返ってくる。
 
 早速準備をして、次の仕事に身を投じなければならない。
 
 ロンシィーー龍矢の戦いはまだ終わらない。