「惣一郎様……」
「うん? どうした?」
「は……恥ずかしいのですが……」
「俺は恥ずかしくないよ?」
「私は恥ずかしいです……」
「ん~、恥ずかしがる湖雪が可愛いからもっと見たい」
「!!!」
「顔真っ赤だ」
「……のせいです」
「誰の所為?」
「惣一郎様の……」
「湖雪、嬉しすぎる」
ぎゅうっと一層強く抱きしめられる。
――母が幹人の妹とは、湖雪はまったく知らなかった。
先代が産ませた子、というのならば、幹人の異母妹になる。
湖雪が初めてこの家に来た日、母に罵声を浴びせたのは当時存命だった幹人の母……先代の正妻だ。おそらくだが、母が幹人の異母妹だと知っての態度だったのだろう。
そんな湖雪を夏桜院の跡取りとして引き取るなんて、幹人は批難を受けるかもしれない決断をするなんて……。
実際、幹人には外に妾が複数いる。その相手の間に、何人か子供がいることも周知の事実だ。なのに、なぜ幹人は自身の子ではなく、妹の子供――姪を跡取りとして引き取ったのだろう……。
わかったことがあって、またわからないことが増えてしまった。