湖雪も惣一郎も、何度もそれだけはと考え直してもらえるように言ったのだが、やはり幹人ではなく早子によって一言に封じられた。
曰く。
「あなたたちは結婚するんでしょう?」
それは確かにそのつもりだが、結婚するのは来年だ。その一年を同じ部屋で過ごすと思うと……頭が沸騰しそうだ。
「わかった、湖雪。もう寝よう」
意を決したように惣一郎は立ち上がった。
「えっ!?」
湖雪は驚いて身を跳ねさせた。惣一朗が湖雪の方に歩み寄ってきて、布団を持ち上げた。
「ほら」
バサッと布団の上掛けがかけられる。
「それは湖雪が使って。それで湖雪は戸側に来い」
「そ…惣一郎様がお風邪を召されてしまいますよっ」
いくら家の中に暖房設備があると言っても、雪の降る夜には変わりない。布団を使わずに寝たりしたら風邪っぴきまっしぐらだ。
「それは今朝も聞いた。俺そんなに柔じゃないよ」
「ですが……惣一郎様こそお布団をお使いください」
「湖雪も聞かない奴だな。じゃあ一緒に寝るか?」
「――っ!! 惣一郎様!」
彼得意の大胆発言に、思わず大声になってしまえば、惣一郎はくすりと笑った。
「無理なら布団被って大人しく寝て」