「……少なくとも夏桜院の家にいるよりは。干渉しなくていいのはどこも同じだけれど、早子(さこ)様の視線をどこでも感じる、夏桜院の家よりはましです」

「ふむ……。お前はどこに居ても楽しくないようだな」

櫻は言うなり、ひとつ肯くと学校とは別の方向へハンドルを切った。

「ちょ、櫻?」

「安心しろ。楽しいという気持ちを教えてやるだけだ」

櫻は「心配などない」と言い放ち、軽やかに笑った。湖雪は言葉を咀嚼するのに時間がかかった。

え………。

これって、連れ去られているんじゃ……?

ないでしょうか。

櫻――……

……今私、心配だらけなのですが……。