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底冷えのする夜だった。

旧い家だが暖房設備はあるので夜になっても寒いということはなかったのだが、今日は違った。

体の中から冷えて来るような――。

布団の上で身震いした湖雪は、ああ、もしかしたらこれが風邪というものかもしれないと思った。しかし、すぐに違うと否定する心がある。

―――これは恐怖だ。

今日初めて逢った……婚約者への。

二人で客間へ戻ると、予想通り早子からが厳しい視線を向けられた。迎えに何時間経っているのだとでも言いたいのだろう。

しかしそれも湖雪以外に見えぬように、湖雪にはしっかり見せての表情だった。

惣一郎はまず遅れたことを詫びた。二人で桜を見ていたことは言わなかったので、惣一郎の到着が遅かったのだととられたようだ。

そこで改めて顔合わせと相成った。

向かいに座った大叔父たちは湖雪にしらじらしいほどの笑顔を向けてきた。湖雪も同じものを返す。

そこで改めて二人は紹介された。

「湖雪。知ってはいると思うが、虹琳寺惣一郎君。ゆくゆくは夏桜院に入りお前の夫となる方だ。今は高校生……でしたか」

幹人は確かめるように敬人を見た。