「何でそんなことを言うんですか? 惣一郎様、私に嘘をついたんですか? お家に戻ってしまわれるんですか?」

「湖雪。俺は虹琳寺には戻らない」

「じゃあ、私の傍にいてくださるんですよね?」

「……ああ」

「今の間は何ですか?」

「…………俺は、湖雪」

「私は惣一郎様といきます!」

「! こゆ

「私は惣一郎様と生きます。行きます。逝きます――だから……! 私に惣一郎様の最期をください」

「………」

「虹琳寺にお戻りにならないでください。ここにいてください。私の隣は惣一郎様だけなんです……っ」

「………っ」

どれほどその言葉が嬉しかったか。湖雪に必要とされる自分に自惚れてしまいそうだ。

湖雪と一緒にいたい。湖雪と添い遂げたい。湖雪と自分の子を見たい。湖雪を愛したい――。でも、もう、どれも………。

「湖雪。……それは俺には無理だ」