どのくらい経っただろうか。 ずっと桜を見ていた青年が顔を俯けた。 「そろそろ行こうか。父上たちが待っているでしょうから」 「ええ。惣一郎様」 青年はくすりと笑った。 「やっぱりわかっていましたか」 「それは。このようなところまでいらっしゃるんですもの、虹琳寺惣一郎様」 青年――虹琳寺惣一郎は湖雪を見て淡く笑んでいた。見透かすような――人を見定める瞳だった。