入浴時や着替える時。

鏡に映る自分の裸を見るたび、涙がこみあげた。

手術の説明の時にも、手術の前日にも涙は出なかったのに。

手術前夜。

綺麗なままの自分を残しておきたくて、スマホのカメラのシャッターをきった。

翌日には失ってしまう乳房を冷静に見つめられたのが、自分でも不思議だった。

看護師が手術説明の後、何度も「大丈夫?」と訊ねてきたけれど、実感がなかった。

手術後にも、胸のふくらみが失くなってしまったことを受け止めきれずに、感情が凍りついていたのかもしれない。

「手術で胸を切除したのに、涙1つこぼさないんだよね、あのこ」

看護師たちの話声をただ、他人事のように聞いていた。

病院にいる間、主治医が回診に来て、傷痕を確認し、インターンの医者が傷痕のガーゼを交換していった。

恥ずかしさも躊躇いもなく当たり前のように、胸を開け、ガーゼ交換に応じた。