「ここは同じ意味の言葉が二重になってるんだ……」

そして、また1つ咳。

「結城さん、風邪ですか?」

「いや……」

結城は紙コップにミネラルウォーターを注いで、一口飲む。

編集長「渡部」の席、真後ろの壁に掛かった時計を見上げ、「6時だな」とポツリ。

机の上を片付け始める。

「結城さん!?」

「今日のスケジュールは終了したからな」

「えっ!? 川村楓(かわむらかえで)》先生のインタビューは?」

「はあ? それならさっき、編集長にデータ渡したぜ」

梅川百冬(うめかわももと)先生の……」

「それも終わった」

霜田奈利子(しもだなりこ)先生の……」

「だ·か·ら……今日のスケジュールはオールクリアだって」

「えーーーっ!? いつの間に!」

「麻生が校正問題解いてる間に」

「ウソーお!!」

「机の上、整理整頓しろ。帰るぞ」