「クシュン」

車を降りた結城が鼻を擦る。

ミステリー作家、西村嘉行の邸宅前。

邸宅の石垣に沿って、数十メートルポプラ並木が続いている。

4月に花を着けたポプラは花が終わると、綿毛つきの種子を大量につける。

この綿毛つきの種子が風にとばされて空を舞う。

ポプラの並木道は、綿毛で地面が真っ白になる。

結城は西村の邸宅に向かい、庭園を車で走りながら、紗世に「ポプラは英語で『コットンウッド』って言うんだ」と話す。

「クシュッ」

「花粉症ですか?」

「あ……ポプラのせいだ」

車を降りると、くしゃみを数回、結城は鼻声気味だ。

「お前はなんともないの?」

「はい、大丈夫です」

「薬、飲んだんだがな~……全く効かない」

結城は上を向いたまま、鞄からポケットティッシュを取り出し鼻水を拭く。

「体質改善しなきゃ治らないって言いますよね」