~ 四人が倒れてから一時間後 ~
「「「「ハッ!!」」」」
四人は同時に目を覚ました。辺りを見渡すと既にディックはいなくなっていた。
いつも四人の隣にいたはずのディック…… その彼はもう彼女等の隣にはもういない。
「……ふぐっ……ひぐっ……うえっ……うえええええええええええええええええええん」
アリスの ごうきゅう!
「アリス、泣き止みなさい。みんなで決めた事でしょう?」
「だって…… だって…… ディックが『さようなら』ってえええええいってたもおおおおおおおおん」
アリスの言葉が三人に深くのしかかる。ディックを強くするためとはいえ、その言葉を予想だにしなかった四人は言葉の意図を読もうとする。
「言葉通りであれば私達との訣別になってしまうのですが……」
リシェルが誰も口にしたくなかったであろう言葉を言ってしまう。
四人共理解はしていたのだ、でも言えなかった。言ってしまえば取り返しのつかない事になるんじゃないかって思ったから。
「もし最悪の事態が起きたらマリーが責任取りなさいよね。計画の発案者なんだから」
セリーヌが言うようにこの追放劇の発案者はディックの最も古くから知り合っているマリーなのだった。
マリーの愛読書である「小説家にのっかろう」で掲載されている追放モノを読んでこの案を閃いたのだった。
マリーは頭が良さそうに見えて案外おバカなのである。
「大丈夫です!この『小説家にのっかろう』に掲載されている追放モノだと主人公は最初は弱いけど、何れ最強になるの。こんな胡散臭い連中に出来てディックに出来ないわけがありません」
愛読書というわりには登場人物を胡散臭い呼ばわりするマリーは如何なものかと思うが、三人は突っ込むのをやめた。
「でもその追放モノってさあ、主人公が強くなる代わりに別のヒロインが登場するんじゃなかったっけ? 何時の間にか恋仲になって取り戻そうとした時に『もう遅い』って言われちゃうあれ」
実はセリーヌも『小説家にのっかろう』を読んでいるからこその突っ込みなのだろうが、マリーはその言葉を待ってましたと言わんばかりに小憎らしいねっとりとした表情で三人に説明する。
「全く問題ありません。実はディックには追跡型魔道具をつけていますから、どこぞのメスガキがディックの半径一メートル以内に入ったらアラートが鳴る様に設定しています。アラート発生後に十分以内であれば緊急コマンドを受け付けることが出来ます。対象の行動不能にするスタン、視界を奪うダーク、言葉を発することができないサイレンス、そして極めつけは私たち自らがメスガキのお仕置きを直接するために私たちの元にに運んでくるキャピタルパニッシュメント。ただし、キャピタルパニッシュメントに関してはバレる可能性が高いので本当に最後の手段になります。まあ、万が一ディックと組もうとすれば少なからずお仕置きが必要ですよね。王国…… いえ、世界最強の我々に喧嘩を売ろうなど身の程知らずの連中に骨の髄まで教えてやらないといけないじゃないですか」
オタ特有の早口言葉でまくしたてるマリーの内容は、あきらかに犯罪臭ただよう発言なのだが、三人の中ではこの程度は想定内の範疇であるため誰も突っ込まなかった。
「アリス、ギルドへの根回しは終わってるの?」
「当然さ、受付のハンスにはディックがメンバーを募集したら女性冒険者が一人もいないパーティーを紹介してもらう様に脅…… 依頼済みさ。万が一ハンスがディックに粗相をしでかそうものなら二度とお天道様の下を歩けない様な恥辱を味わう事になるだろうね。ククク。当然なことだけど、ギルドマスターの弱みも握ってるから私たちがハンスを使っていることは黙認してもらっている。事実上ギルドは私たちが握っていると言っても過言ではないさ」
いや、過言だろ。根回しをしろとは言ったが、脅せとは一言も言ってない。なんでこんなやべー奴が勇者やってんだと三人は思っているが、それ以上にコイツを勇者に指名した王国のセンスのなさを疑っている。今更ではあるが……
「そうして強くなったディックが私たちの元へ帰ってくれば全部解決です。そうすれば…… 王国のクソ虫共も大人しく黙るでしょう」
王国のクソ虫…… そう、そもそもなぜこの追放劇が必要になったかというと、勇者叙任式まで遡る……
ディックは知らない。追放されたディックを常に監視下に置いている四人の看守がいることを。
ディックは知らない。ディックの貞操を守る為に冒険者ギルドを脅……強制的に協力させた四人の犯罪予備軍がいることを。
「「「「ハッ!!」」」」
四人は同時に目を覚ました。辺りを見渡すと既にディックはいなくなっていた。
いつも四人の隣にいたはずのディック…… その彼はもう彼女等の隣にはもういない。
「……ふぐっ……ひぐっ……うえっ……うえええええええええええええええええええん」
アリスの ごうきゅう!
「アリス、泣き止みなさい。みんなで決めた事でしょう?」
「だって…… だって…… ディックが『さようなら』ってえええええいってたもおおおおおおおおん」
アリスの言葉が三人に深くのしかかる。ディックを強くするためとはいえ、その言葉を予想だにしなかった四人は言葉の意図を読もうとする。
「言葉通りであれば私達との訣別になってしまうのですが……」
リシェルが誰も口にしたくなかったであろう言葉を言ってしまう。
四人共理解はしていたのだ、でも言えなかった。言ってしまえば取り返しのつかない事になるんじゃないかって思ったから。
「もし最悪の事態が起きたらマリーが責任取りなさいよね。計画の発案者なんだから」
セリーヌが言うようにこの追放劇の発案者はディックの最も古くから知り合っているマリーなのだった。
マリーの愛読書である「小説家にのっかろう」で掲載されている追放モノを読んでこの案を閃いたのだった。
マリーは頭が良さそうに見えて案外おバカなのである。
「大丈夫です!この『小説家にのっかろう』に掲載されている追放モノだと主人公は最初は弱いけど、何れ最強になるの。こんな胡散臭い連中に出来てディックに出来ないわけがありません」
愛読書というわりには登場人物を胡散臭い呼ばわりするマリーは如何なものかと思うが、三人は突っ込むのをやめた。
「でもその追放モノってさあ、主人公が強くなる代わりに別のヒロインが登場するんじゃなかったっけ? 何時の間にか恋仲になって取り戻そうとした時に『もう遅い』って言われちゃうあれ」
実はセリーヌも『小説家にのっかろう』を読んでいるからこその突っ込みなのだろうが、マリーはその言葉を待ってましたと言わんばかりに小憎らしいねっとりとした表情で三人に説明する。
「全く問題ありません。実はディックには追跡型魔道具をつけていますから、どこぞのメスガキがディックの半径一メートル以内に入ったらアラートが鳴る様に設定しています。アラート発生後に十分以内であれば緊急コマンドを受け付けることが出来ます。対象の行動不能にするスタン、視界を奪うダーク、言葉を発することができないサイレンス、そして極めつけは私たち自らがメスガキのお仕置きを直接するために私たちの元にに運んでくるキャピタルパニッシュメント。ただし、キャピタルパニッシュメントに関してはバレる可能性が高いので本当に最後の手段になります。まあ、万が一ディックと組もうとすれば少なからずお仕置きが必要ですよね。王国…… いえ、世界最強の我々に喧嘩を売ろうなど身の程知らずの連中に骨の髄まで教えてやらないといけないじゃないですか」
オタ特有の早口言葉でまくしたてるマリーの内容は、あきらかに犯罪臭ただよう発言なのだが、三人の中ではこの程度は想定内の範疇であるため誰も突っ込まなかった。
「アリス、ギルドへの根回しは終わってるの?」
「当然さ、受付のハンスにはディックがメンバーを募集したら女性冒険者が一人もいないパーティーを紹介してもらう様に脅…… 依頼済みさ。万が一ハンスがディックに粗相をしでかそうものなら二度とお天道様の下を歩けない様な恥辱を味わう事になるだろうね。ククク。当然なことだけど、ギルドマスターの弱みも握ってるから私たちがハンスを使っていることは黙認してもらっている。事実上ギルドは私たちが握っていると言っても過言ではないさ」
いや、過言だろ。根回しをしろとは言ったが、脅せとは一言も言ってない。なんでこんなやべー奴が勇者やってんだと三人は思っているが、それ以上にコイツを勇者に指名した王国のセンスのなさを疑っている。今更ではあるが……
「そうして強くなったディックが私たちの元へ帰ってくれば全部解決です。そうすれば…… 王国のクソ虫共も大人しく黙るでしょう」
王国のクソ虫…… そう、そもそもなぜこの追放劇が必要になったかというと、勇者叙任式まで遡る……
ディックは知らない。追放されたディックを常に監視下に置いている四人の看守がいることを。
ディックは知らない。ディックの貞操を守る為に冒険者ギルドを脅……強制的に協力させた四人の犯罪予備軍がいることを。