「ふゆ、そろそろ行こーぜ」
「え? ああ、うん」
流夜と咲桜ちゃんを見送って、僕がいつもの方法で女性たちをかえした。
今日はマナちゃんの依頼で偽婚約者たちの様子を見に来たけど、問題なさそうだね。いつの間にか付き合ってるし。順調なだけじゃないか。
「……降渡、絆ちゃんとはどうなってるの?」
「うん? 相変わらず。顔合わせたら説教しかされねーよ」
コインパーキングに停めてあった降渡の車に乗り込む。
流夜相手にばれないで尾行なんて出来るとは思っていなかったし、流夜の口からしっかり答えが聞けたから今日の降渡の報告書は十分だろう。
……咲桜ちゃんを迎えたときの浮かれ流夜を見たら、あ、今日の尾行、気づかれずに成功するね、と思ったのが本音だったりするけど。
「お前は? 相変わらず?」
助手席についてシートベルトをしめたのを見て、降渡がバックミラーの位置も確認する。
「かな。……流夜、すきな子にはとことん骨抜きなんだね。あれって僕ら、安心していいのか警戒するべきかわかんないよ」
降渡が人通りに注意しながら車を発進させる。
このあと僕を署まで送り届けたら、降渡は別の仕事に入ることになっている。
「安心しときゃいんじゃね? よかったじゃん。あいつもちゃんと恋情愛情持ってて」
「その辺りはいいんだけどさ。咲桜ちゃん、一応生徒だし」
「そんくらい、転勤なりなんなりしてかわすだろ。それよかふゆ――顔色悪ぃぞ。今日は休みだろ? 家に帰るか?」
「ん――大丈夫、いつものだから。署に居る方が色々出来るし」
「いつものって……いっつも引きこもってるからんな蒼っちいんだよ。少しは日光浴びろ。だから薄倖だとか言われんだよ」
「……降渡」
「ごめんなさい」
一段低くなった僕の声に、降渡、即謝った。ま、いいよ、と窓から外へ視線を投げる。
「……降渡さあ、絆ちゃんといると、どんな感じなの?」
「あ? だからいつも怒られてばっかだよ。りゅうみたいにベタベタな感じはろくにねえ」
「ベタベタ……」
ぷっと、小さく吹いた。