「吹雪と降渡がうるさかったんだ。体面上付き合ってるんだからちゃんと行って来い、て。俺の意思が率先して付き合ってる気はなかったから、普段出入りしてる警察署に行って次の事件洗いたくて、デートだなんだもどうでもよかった」
う、うわあ……。
「彼氏最低じゃないですか」
思わず平坦な瞳になると、流夜くんは痛みを覚えたみたいな顔をした。
「やっぱりか」
「自覚あったんですか?」
「最近。……咲桜と一緒にいるようになって、相手がどういう気持ちだったかわかるようになった。申し訳ないことをしたと反省してる」
「………」
そんな風に感じてくれていたんだ。思わず最低とか言ってしまったけど……。
流夜くんは申し訳なさそうな顔を見せる。
「……今も、早く吹雪さんとこ行きたいですか?」
「今は、少しでも長く咲桜の傍にいたい」
……またそんな嬉しくなってしまうことを言う。服を見るふりをして、顔を逸らした。
「流夜くんって、すごく素直なこと言うよね。わざと?」
心臓に悪いほど真っ直ぐに言葉をくれるから、ドキドキしてばかりだ。
「素直? じゃないだろ、俺。ねじ曲がってるとかしか言われたことない」
かなり素直だと思う。私に対して、言葉を繕う素振りがない。
……では、無意識にくれる言葉は本音なのかな。
「でも……私に、嘘ついたことないでしょう?」
「嘘?」
過去にいた彼女のことや、警察に関わっていること。
遙音先輩のことのように言葉にしていないことはあるけど、嘘を言われたことはないように思う。