「……そう言えばマナさん、逢ってないなー」
「気を付けろよ。そこらへんから現れるかもしれない」
「マナさんをなんだと思ってるの」
「神出鬼没」
「……同感です」
確かにマナさんに合う形容だった。
「さて、どこへ行く? 女性の服とかよくわからないから、咲桜の行きたいところでいいぞ」
「いいのっ? えーと……じゃあ、少し歩くんだけど、いい?」
「ああ」
微笑み肯かれ、咄嗟に心臓の辺りを押さえた。
今、心臓飛び出してしまったかもしれない。どこかに転がっていないか探してしまった。
「咲桜? どうした。……知り合いでもいたか?」
挙動不審を案じて言ってくれたけど、心配どころは違った。しかし口にするのもヘンな話なので、首を横に振って誤魔化した。
手は、繋がれたまま。うあー、顔があげていられない……。でも流夜くんのことは見ていたい……。
実のところ、この駅前周辺も笑満と一緒に来るお店はある。
わざわざ歩かなくても足りるくらいだけど、今は繋いだ手がもったいなかった。
もう少しこのままでいたかったので、少しわがままを言わせてもらった。
「そういや咲桜、訊いてもいいか?」
「え、なに?」
呼ばれて、はっと声と顔をあげた。その先の横顔を見て、また心臓がバキバキしてきた。いや、ドキドキしてきた。