はたはたと手を振ると、流夜くんは半眼で肯いた。

「あーそろそろ第二波来るかな。あとは自分でどうにかしてよね」

「え?」

吹雪さんの気だるげな声に振り向くと、別の女性たちが近づいて来ていた。……また妹扱いだろうか。

「行くぞ、咲桜」

「え、いいの?」

「気にするな。降渡、吹雪、愛子への報告はもう十分だろ。咲桜との仲は問題ない」

マナさん? 報告ってなんだろうと考えると、降渡さんが降参したというように手を挙げた。

「ばれてた? 愛子心配性だからさー。いいよ、行きなー」

「流夜くん?」

「あいつら、愛子の密偵」

「みっていっ⁉」

「そういうことだ。行くぞ」

先ほど触れられた手がしっかり握られ、その場から連れ出された。

「あの、密偵ってなに?」

「一応の偽婚約、どうなってるのか気にしてんだろ。仲違いしつつ婚約者だって言ってもろくに説得力ないし、なら猶更って咲桜の方に近づこうとする奴もあるだろうし」

「………」

そう言えば、今はちゃんと恋人関係になっているけど、元はマナさん発案の偽婚約だったんだ。

「だから、あいつら使って調べさせたんだろ。降渡はクライアントが愛子でも仕事として頼まれたら断らないし、吹雪は楽しそうだからって理由でなんでもするからな」

な、なるほど……。