「咲桜、そいつに訊かなくていい」
「結構詳しいよ。変装術とか、マナちゃんから教え込まれてるから」
「お、教えてもらうことって、出来ますか……っ?」
知りたい。笑満と二人で頑張っていることだけど、私は相手が九つも年上だ。
意気込んで訊くと、不意に目の前が翳った。
「えっ?」
流夜くんの手が、吹雪さんに向く視線を邪魔していた。
「吹雪なんか頼らなくていい。……俺が一緒にいるんだから、頼れよ」
「………」
まだ開かない世界の向こうで、吹き出す声がした。……あの、また笑われていますが。
「わ、わかりました流夜くんっ。頼るので、えと、一緒に選んでほしいので手をどけてください」
肌に触れて遮られているわけではないので、上目遣いに見上げる。すると流夜くんはやっと離した。
「ラブラブだねえ。ま――そろそろ邪魔が来たかな」
「あのぉ、お暇ですか? よかったらご一緒しませんか? あっ妹さんもよかったら一緒に」
……妹扱いされた。そして逆ナンというものを初めて見た。当然されたのも初めてだ。
声をかけて来たのは一人だけど、その友人らしい女性が後ろに固まっていた。
お化粧も大人っぽい洋服も似合っている、キラキラした大人の人たちだ。
半歩下がって見ると、流夜くんも降渡さんも吹雪さんも、キラキラしい人たちの仲間なのだとわかる。
そして声をかけられても困った様子もないことから、慣れているのだとも。
キラキラし過ぎていて瞳が逸らせない。
むしろこんな場合なのに落ち着いている流夜くんには、やはり見惚れてしまう。
……普通は妬くんじゃないかな、とか思ってみる。
「咲桜」
すっと、流夜くんの手が私の指に触れた。
「あの……」
「大丈夫。吹雪に任せておけ」
え? と首を傾げるより前に、吹雪さんがふっと唇に笑みを見せた。
「君たち、僕に美しさで敵う気でいるの?」
え。