「………」
流夜くんは一転、無言でそちらを睨む。降渡さんがカップを置いて近寄ってきた。
「りゅうが本命と初デートということで、尾行しに来ました」
「帰れ」
「冷たいこと言うなよー。俺んときもお前らついてきたじゃん」
「学生と一緒になるな。失せろ」
「やーだよ」
ふいっとそっぽを向く降渡さん。その隙に逃げようとしても、たぶん降渡さんには効かないのだろう。
「諦めなよ、流夜。お返し一つあげるからさ」
続いて来た吹雪さんの言葉が謎で瞬いていると、吹雪さんは私を見てにっこり笑った。
「咲桜ちゃん、今日はまた大人っぽいね」
「あっ、はい。がんばりました」
お化粧、慣れていないけど……。
「けどちょーっと無理しすぎかな?」
「うっ……」
本当は薄ら自分でも疑問だったのだ。流夜くんと並ぶのだから、と考えてやってみたのだけど、やはり自分には合っていなかったか……。
しゅんとしてしまうと、吹雪さんは小さく吹いた。
「素直だねえ。咲桜ちゃんは元が大人っぽくて綺麗なんだから、無理に装う必要ないってことだよ。化粧もかえって邪魔してるくらいだ」
「………」
それは……
「吹雪さん、そういうの詳しいんですか?」