……明らかに流夜くんは人目を引いていた。
わざとらしく流夜くんの前を行ったり来たりする女性までいる。うわ……こういう人ってほんとにいるんだ……。流夜くんにしろ、見ている女性たちにしろ。
どうしよう……早く傍に行きたいのに、滅茶苦茶怖い。対女子ということに経験のない私の足は萎縮していた。野郎だったらぶっ飛ばしで問題ないんだけど、女子を敵に廻すことには抵抗がある。殴りたくないしなー。
「咲桜」
悩んでいる間に、流夜くんの方が気付いて声をかけてきた。
メガネのない顔。遮るものひとつだけでキラキラして見えるから謎だ。
「咲桜? どうした」
ぽーっと見惚れていると、顔の前で流夜くんが手を振った。はっとして周囲を見回した。誰だよお前、という瞳で見られている……。でも、
「ご、ごめんなさい、遅れました」
未知数の皆さんより、たった一人の愛しい人が大事だ。軽く頭を下げると、流夜くんは苦笑した。
「そんなことはない。無事に来てくれてありがとう」
「………」
しゅかああっと頬が熱くなる。なんでそんなことをさらっと言えるの。私まだ、流夜くんのとこに来ただけだよ……。どこが正直不慣れなんだこの人は。
「おーおー、愛おしいねー」
「仲よさそうでなによりだよ」
ふと聞こえてきたのは、聞き覚えのある声。首を巡らせると、近くのカフェテラスにくつろいだ様子の吹雪さんと降渡さんがいた。
……え。