『ごめんなさい……なんか、ほんと夢みたいで……流夜くんがあったかいから、本当なんだってわかったら……嬉しくて』
見せたのは、はにかんだような笑顔だった。
『……嫌じゃないのか?』
不安を問いかける今ですら、頬から手を離せずにいる。本当に手放せない。
『嫌じゃないよっ。むしろ……しあわせだなーって、思う』
幸せ。咲桜もそう感じていてくれた。それがまた、俺を幸せにする。
『……ありがとう』
『はい……』
『……咲桜、もう一回抱きしめていいか?』
『えっ……どうぞ』
腕を広げる咲桜を見て、一言。
『……だから警戒しろよ』
『自分から言っといてなに!』
怒られた。
うーん……なんだか色んな方向から攻撃されそうだなあ。
『あー、うん。悪かった』
なんとも歯切れの悪い返しを受けて、咲桜はぶすくれた顔になる。
『ごめんごめん。……おいで』
手を差し出すと、咲桜は一瞬迷ったのちに取った。こちらから引き寄せるように抱き込む。
『……在義さんにはなんて言おうか』
『父さん? ……そうだね、言わないとだよね』
『咲桜を嫁にしないまま死ぬわけにはいかねーからな』
『なっ⁉』
咲桜がびくりと硬直した。娘溺愛の在義さんに殺されかねないからなー。
『なんだ? 在義さんに反対されるのが怖いか?』
『それは、流夜くんだったら反対されないと思うけど……』
泡喰っている咲桜。信頼されているみたいでくすぐったい。
『……求婚は、ちゃんとするから』