「くっ……」

「……なんで敵みたいな見られ方される」

昨日彼女になったばかりの子にそんな瞳で見られたくない。けれど、その瞳に映るだけでも嬉しいと思う。……本音は好意の瞳で見られたい。

「悪かった。咲桜がしてほしいことはないか?」

あまり怒らせてばかりでも嫌なので、訊いてみた。知りたいことがあったら直接訊くしかない、とは、咲桜で学んだ。

「………」

しばらく恨みがましい瞳で見られた。可愛い……そう思って頬に手を伸ばしかけ、引っ込めた。今は咲桜の答えを待っている段階だった。自分の右手を左手で抑える。

「……なにやってんの?」

不審な瞳で見られた。

「気にするな。それで……これくらいならいいか?」

いつまで経っても咲桜からしてほしいことの答えがないので、右手を絡め取った。手の甲を上にして、口づけを落とすと、びくりと派手に驚かれた。

「……お前ほんと慣れねーな」

「りゅ、流夜くんが勝手に色々するからじゃん! 私の頭が追いつかない!」

「そうか? 咲桜は少しくらい引っ張った方がいいのかなって」

「う……」

咲桜は恋ごとには疎いようだから言ってみると、言葉に詰まってからしおれた。それからぎゅんっと見上げて来た。

「じゃ、じゃあなに? 流夜くんはどれだけの彼女がいたのっ」

いきなりの――ヤケッパチのようなその問いかけに、少し面喰った。咲桜もそういうこと気にするのか……。気にしなくていいのに。けれど、この前の『不誠実なんですか』発言はダメージだった。頑張って思い出してみた。

頑張った。

………。