「めがね?」

乞うと、咲桜は言われたとおりにする。伊達の眼鏡なので視界に影響はないのだが、外すと、少しだけ咲桜が近くになったように感じる。

「……置いていいの?」

咲桜が困っているので、咲桜の手からそれを取って立ち上がった。

「どうしたの? 学校で外しちゃまずいんじゃ……」

「ん、キスしたくなった」

「ええっ!」

叫ばれた。その反応が面白くて、からかうように額に口づけた。

「うあ……」

慣れないからか、咲桜からは間の抜けた声が出る。

「……こっちのがよかったか?」

つと、今度は指が咲桜の唇の端に触れる。

「いいえっ! とんでもない!」

咲桜はぶんぶん首を横に振る。

「もう慣れてくれていいのに」

「無理だよ⁉ 簡単に言うけどこの距離だってまだドクドクしてるんだから!」

……だからなんでドクドクしてんだよ。ドキドキしてほしいんだけどな。

「……まあ、咲桜からしたくなったらしてくれればいい」

「要求レベル高すぎるよ!」

今度は怒らせた。

「なんでそう平然と出来るの! 私をなめんな!」

「そうしたいと思うからだが……」

平然としているつもりもない。実はこっちだって結構心臓に負担かかっている。トシの分だけ、隠すのに慣れているだけだ。