「日義はいいのか?」
「いいんですよー。あいつまた寝てばかりの癖に一位とか取りやがって。少しは困ればいいんだ」
俺の疑問に、松生は腕を組んで返してきた。
松生は咲桜の小学校来の友人で、もう一人日義頼といつも三人でいる。
松生は咲桜から、俺との偽婚約を聞かされて以来素の方でも知った仲だった。俺は手元の本に目を落としたまま続ける。
「咲桜は?」
「日直の仕事です。でもすぐに来ますよ。流夜くんに逢いたがってたから」
松生の声がにやついている気がしたが、気にしない。
「珍しいな。咲桜と松生も一緒に来そうなのに」
「いつもならそうなんですけどね。……ちょっと先生に訊きたいことがありまして」
「訊きたいこと?」
「はい。……先生って、はる
「失礼しまーす。……失礼しましたーっ!」
扉を開けた音と咲桜の声がしたと思ったら、瞬時に逃げ出した。
え。
本に向けていた顔をあげた。近くに松生の顔があった。
「………」
松生も松生で固まっていた。
「――咲桜!」
机を飛び越えて、最短距離で咲桜を追いかけた。たぶんだけど咲桜になにか誤解された!
廊下を走る咲桜はすぐに捕獲出来た。