「……流夜くん」

「早目に言っておきたくて」

「うー……。行動起こすときは次からは先に言っておいてください」

「……悪かった」

咲桜の顔は、松生には自分で言いたかったと言っている。

今日松生とここに張ることは昨日俺と逢う前に決めていたようだから、言うタイミングは解決した今までなかったのだろう。

咲桜は松生を大事にしているから、そこはすまないことをしたと反省する。

「笑満さん……流夜くんと付き合うことになりました……。なにこれ恥ずかしんですけどっ!」

途中で限界にきたようで、顔を覆って叫んだ。

「お、おめでとう!」

松生が思いっきり咲桜に抱き付いた。

「やったー! よかったー! 咲桜が自分に鈍感だから心配だったんだよー。咲桜おめでとう! 先生お手柄!」

何故か俺が褒められた。

しかし咲桜の親友である松生にここまで歓迎されるのは正直ありがたい。人目を忍ばねばならない立場の上にある関係だから。

「ぶははははっ! マジで⁉ 咲桜が神宮の彼女⁉ ま、マジかよ咲桜すげーなお前!」

爆笑された。

壁をどんどん叩いて腹抱える遙音に、言ったことを後悔した。

やはりこいつには隠しておくべきだったか。色々とうるさいから。

「は、遙音くん笑い過ぎではっ」

「ごめっ、ごめん笑満ちゃん……っ、くくっ……あ、咲桜のこと笑ったわけじゃねーからな? 気ぃ悪くしないで」

涙すら浮かべて笑い転げた遙音は、松生と咲桜には片手をあげて謝った。

「もうお前帰れ。うるさい」

遙音は「ごめんごめん」と続けた。

「冷たいこと言うなよー。お前と咲桜が逢いやすいように……ぶははっ」

最後まで言う前にまた笑い出した。駄目だこいつ。

「……松生。そいつの口を止めるのはどうすればいい?」

「え、えーと……遙音くん、どうすればいいかな」

本人に訊いた。遙音は今度こそ、と笑いを収めた。