「……次の授業に間に合うのか?」

「大丈夫ですっ。走るんで」

本当に休み時間ごとに来るので、一応昼休みに訊いてみた。松生は緊張した顔だが、咲桜は俺がよく知る顔をしていた。探るものがあるときの顔。警察や探偵の中に何度も見てきた顔。

本当に在義さんの娘だよな……。

そう思ってしまうくらい、よく知る異端の刑事に似ていた。

血を引いていなくても、咲桜は在義さんの娘だ。

カタ、と小さな音がした。隣の教室に、この足音から遙音がいると知る。休み時間にやってきては、俺をからかって帰っていくところは完全に降渡からうつったものだ。

向こうから、こちらに咲桜と松生がいることを知るのは容易だ。まずこの二人、物音を立てないとか気を付けていない。こっそり窺うために来ているわけではないから注意していないようだけど、存在はまるわかりだった。……それに気づいてか、いつものように遙音の乱入はない。

ふと、時計を見遣った。今は昼休み。まだ終わるまでは遠い。

遙音がいて、向こうは松生がいることもわかっている。ケリをつけるには頃合いか。

「咲桜」

来い来い、と手招きすると、咲桜は素直に寄ってきた。口元に指を立ててから、隣の音楽室を指さした。……懐かしい動作だな。あのとき隠れていたのは愛子だった。

咲桜は一度だけ瞬いたが、すぐに意味を理解したようだ。大きく肯く。