「流夜くんが護ってくれるって言ったんじゃん」
「そうだが……俺からお前を護ることは出来ないだろ」
「? なんで。流夜くんから護ることなんてあるの?」
流夜くん、大概優しい。時々困ったことをするけど、笑満の言う通りかなり甘いと思う。って言うか甘やかしてくるので、どうしていいか困る。
応えると、また呆れたような瞳で見られて、ため息までつかれた。
「……あるんだよ」
とん、と軽く肩を押された。いつもだったらそんなことをされたら払える手。むしろ逆手に取って投げ飛ばすことだって出来るのに、昨日の抱きつかれといい、流夜くん相手だと反抗が出来ない。
導かれるように床に倒され、真上に流夜くんの顔。昨日と同じ構図なのに、表情が全然違って見えるのはどうしてだろう。
……また心音がおかしい。
え、ええと……。
どういう事態だと目を白黒させる私を見下ろして、流夜くんは観念したように息を吐いた。
……あ、呆れてしまった? また自分、ヘンなことを言ってしまっただろうか。
……流夜くんに嫌われるのは、嫌だ。
「ほらな……こうやって触りたくなる。俺はお前に大分、邪なんだよ。付き合う前提とかじゃ、全然足らなくなるときばかりだ。だから……俺からは、自分で護ってくれ」
何度か瞬いているうちに、言葉が呑み込めてきた。よこしまって……そういう意味ですか⁉
勝手に顔が熱くなるのがわかったけど、流夜くんはそういうことまで言葉にしてくれるんだ……。たぶん、自分が鈍いから言葉にして伝えてくれるのだと思う。嬉しいと思う反面、やっぱり恥ずかしい。そ、そうか……触りたくなるとか、そういう心配をしているんだ。……なら自分はなんと答えようか……。
「大体」
流夜くんは私の腕を取って、今度は身体を起こした。