「よし、笑満。明日遙音先輩のとこ行こう」

「ええっ! な、なに言ってんの⁉」

「ガチで言ってるよ。先輩んとこ行って、謝ろう。それだけ」

「謝るって……二年の教室行くの?」

「先輩だってこの前うちのクラス来たじゃん?」

「そ、そう言ったって上の学年に行くのは全然違うよっ」

「そう? じゃあ旧校舎で待ち伏せよう」

「待ち伏せ……」

「私と流夜くんのこと、遙音先輩知ってるんだから、むしろいいじゃん。旧校舎ならほかに人いないし」

「……咲桜、自分を利用するようになったね」

「せっかくいる人材なんだから使いなよ。というわけで、明日私から逃げたら、私もう流夜くんとしか話さないから」

「く……そんな使い方があるとは……てかそれ、頼がゆるさないでしょ」

「その辺りはぼかす」

「ゆるい宣言だね」

「そんなことより。――明日、言うことは謝ることだけでいい。それならいいよね?」

「………腹括るしかないよね」

「うん」

「……わかった。でもお願い。あたしの足が逃げないように、あたしのこと捕まえてて」

「了解。捕縛しておく」

「そこまで大袈裟じゃなくていいから」

手を握ってるとか肩捕まえてるだけでいいからっ。笑満の声が明るくなっていた。

明日は遠い。今日の傷は、夜明けまでに癒せる。

「……ところで咲桜。流夜くんとはどうなりました?」

「えっ……」

く、やはり笑満はぬかりない。