……邪魔するなんて、堂々と宣言するかな。

――流夜くんは、ちゃんと答えてくれた。言葉にしてくれた。今の自分では気持ちにつく名前がわからないし、どう答えていいのかもわからない。でも、流夜くんの誠実に対しては、私も誠実に応えたい。

……今、不誠実なのは、私の方だ。

……流夜くんと一緒にいる、時間はすきだけど。

「……わかった。じゃあこれはどうだろう。付き合う前提で、偽者婚約」

「……は?」

流夜くんは、またわけのわからないことを言い出した、というような胡乱な顔をした。

「なんだ、付き合う前提って」

「結婚前提みたいなもの? たぶん、流夜くんの言う通り、私結構すきだと思う。でもそれが流夜くんと同じなのかわからないから――だから、付き合うのを前提にする、みたいな」

「……そのあとに偽婚約って繋げるとすげー意味わかんねえな」

前提と結果がねじれている。私も、無理矢理作った言葉だ。反論は出来ない。

「それは、咲桜の恋人には一番近いってことか?」

「うん」

それには素直に肯いた。生まれた時からいるのが当たり前だった在義父さんと龍生さん、夜々さん以外で、『一緒にいて安心出来る人』というのは、初めて出逢った。

「友達より?」

「うん」

「……わかった。なら、それでいい」

私も、自分で見極めなければならない。目の前のこの人は、自分にとってどんな人なのか。

今までの『ニセモノ』の関係は、もう続かない。

……流夜くんから伝えられた今、私は、ニセモノは続けられない。

「……このくらいはゆるしてくれるか?」

そっと、私の前髪を掻き上げ、流夜くんが口づけを落とした。