「駄目だ……さっぱり作戦が思いつかない……」
「うん……私らってこういうの駄目だったね……」
笑満と二人して頼の机で項垂れていた。頼は今日も机に突っ伏して寝ている。
相談しているのは遙音先輩のことだった。
笑満はどうにか接触をはかりたい。それは一晩のうちに決意した。だが、どうすればいいのかが全くわからなかった。
二人そろって、恋愛経験、全くなかったからだろうか。
笑満はずっと先輩しかすきになったことがなく、所在もわからなかったために行動のしようもなかった。
私は私で誰かをすきになったことすらなかった。項垂れるしかない。
「……夜々さんに相談にいく?」
先輩の抱えた過去が大きいだけに、クラスの友人には相談しにくい。
養護教諭にして私のお隣さんである夜々さんならば、私の出生も知っているし秘密は護ってくれる。
「そうだねえ……最後の手だよね」
「じゃあ、放課後行こうか?」
「うん。そうする」
放課後、夜々さんのいる保健室に行こう。その前に……
「笑満。昼休み、流夜くんのとこ行っていい?」
「ん。行っておいでよ」
「じゃなくて……笑満も一緒に」
「あたし? お邪魔でしかないじゃん?」
「ううん。あのね、遙音先輩のこと、たぶん流夜くんならもっと知ってるから」
「……そうなの?」
「うん」
在義父さんの言っていたことが本当なら、訊けば答えてくれると思う。
ふと見遣ると、机に載せた笑満の手が小刻みに震えていた。
「……ごめん、ちょっと急だった?」
事件のこと、笑満が総てを知っているわけではない。
父親の印象も『いい人』程度しかない笑満。
事件に関わった一人である流夜くんに話を訊くのは、知らないそこまで知るということ。
……人が殺されているのだ。しかもそれは知っている人たちで、すきな人の家族だ。
震えて当然だ。