「桃子は、在義が見つけた当時から数えて、四年生きた。元々儚げで線の細い子だったよ。あの子は必死に生きてた。仕事や世間より自分を選んでくれた在義のため。自分の知る唯一の真実である娘ちゃんのため。必死こいて生きてた。……身元のわからない子だったから、亡くなったあとには検死にかけられた。そのとき在義は言われたよ。今まで普通に生きていられたのが信じられないくらい、色んな器官にガタがきてる、てな。……桃子が死んだのは、寿命だった。生き切ったんだ、あの子は」
「………」
「だから、責めてやるな。娘ちゃんが傷を負ってるならおめえがなんとかしろや。おめーの青くせえ恋人論でどうにかしてやれよ」
「………」
人選を間違った。なんでこの人のところへ来てしまったのだろう。署から近かったからなんだけど。
立ち上がった。
「言われなくても、俺がどうにかします」
「おー。そうしろ」
「失礼しました」
咲桜のことで、自分に出来る位置を誰かに譲る気は、もうなかった。