「……素直になったら咲桜を恋人にしたいとか言ってしまいそうです……」

「言やあいいじゃねえか」

「駄目でしょう、咲桜は生徒な上に在義さんの娘ですよ」

「生徒は壁だろうけど、在義は関係ねえだろ?」

「在義さんの娘バカは並じゃないでしょう」

「ああ? そうか? ……ああ、そういやそうだな。けどな、流夜。あれ、ガチじゃねえから」

「……なにがですか?」

「在義の娘バカ。半ばわざとなんだよ」

「なんでそんなことを? ……って、どうしてわかるんですか?」

「何年あいつとつるんでると思ってんだ。在義な、娘ちゃんを大事にすることでしか、桃子の生を肯定出来ねえんだよ」

「………」

龍さんは続ける。

「在義にとっちゃ娘ちゃんは、桃子が生きていた唯一の証拠だからな。だから娘ちゃんをなくせない。あれは娘バカでもあるが、嫁バカなんだよ」

「………そう、なんですか?」

咲桜の存在を通して、桃子さんがいたことを確認する。在義さんはそうやって生きているというのか?

「そうだよ。まあ、デフォでも普通よりは親バカだろうけどな。だから別に娘ちゃんを無視して桃子だけを追ってるとか、娘ちゃんに桃子を重ねてるわけじゃねえ。ちゃんと親父だよ。ただ、桃子は何もなさすぎるんだ。今はもう『娘ちゃんがいる』ってこと以外に、桃子が存在していた証拠がねーっつーかな。お前も、娘ちゃんと仲良くなることで恨まれたりしてねえだろ?」

「………」

結構怖い思いはしている気がする。

けれど、親しくすることを邪魔されたり恨まれたりはしていない。むしろ先ほどはアドバイスももらった。