……あれ? なにか不安になってきた……。咲桜は巻き付かれただけ、と言っていたけど……。
ふらりと立ち上がる。
「……ちょっと確認してくる」
「なにを?」
平坦な吹雪の言葉を背に受けて、部屋を出た。
夜中とはいえ人が完全にいなくなる場所ではないので、人気のなく電話を出来る場所を探した。結果、一階ロビーまで来てしまった。スマートフォンで、咲桜の番号を呼び出す。時間は十二時前だ。在義さんが家にいるのならば、起きて待っていることもない。まだ起きているかは微妙だ。
『は、はいっ』
コール二回で咲桜が出た。また泡喰った様子が目に浮かんで、微笑ましくなる。
「すまない、遅くに」
『い、いいえ! どうしたの? 電話珍しい』
「あー、いや、さっきの話なんだけど……」
『うん?』
「本当に……危ないことはなかったか?」
『さっきって、父さん? 別に怒られなかったけど』
「……その前。うちでのこと」
『え? あっ! もしかしておでこが異様に痛いとかっ?』
「……その原因の方だ。咲桜になにか仕出かさなかったか……」
『えっ……』
咲桜の顔が紅く染まる音が聞こえてきそうだ。
『えと……たぶん、心配してるようなことは……ないよ? 本当に転がってただけだから……』
汗を飛ばしながら必死に喋るのが伝わってくる。くそ、電話が邪魔だ。
「そうか――本当にすまなかった」
『なにをしたのかな?』
「!」
『父さん! 私の電話!』
いきなりの在義さん登場。電話を落としかけた。
向こう側では咲桜が、今度は別の意味で必死に騒いでいる。どうやら在義に電話を強奪されたらしい。