「なら、話していいかな。事件の捜査が始まって、現場にいた流夜くんたちに、遙音くんは飛びついて助けを求めたそうだよ。ほかにも警察官はたくさんいた中を、ね。その後、流夜くんたちが見事犯人のアリバイを崩して逮捕された。そうか……遙音くん、藤城に入学したんだね」

「へえ……え?」

今、重大な情報が口にされたような気が……

「どうした?」

「いや、あの……犯人のアリバイ崩した、て?」

「ああ。計画殺人だったんだ。犯人は、犯行時間に別の場所にいるアリバイを作っていてね。一時容疑者リストからも外れたそうなんだが、流夜くんがそれを崩した。以来、遙音くんは流夜くんに懐いているらしいよ」

「………」

ほんと?

いやいや、流夜くんが学者という立場で警察に関わっている、という表現をそこまで深く考えていなかったわけではないけど、本人が『吹雪のとこで資料整理の手伝い』と言っていたから、現場に乗り込んでいるとは思いもしなかった。

「そんなことしてんの⁉」

「あれ、知らなかった?」

「し、知らない!」

ぶんぶん首を横に振ると、在義父さんは小首を傾げた。

「流夜くんのこととか、結構署内では有名なんだけどねえ」

「知らない――てか教えてくれてない!」

「うーん、まああの子はそういう自分から話すの苦手だからね。生い立ちのこともある」

「そ、なんだ……」

「そうだよ。だから、咲桜が流夜くんの家族のことを知ってるって聞いたときは驚いた。ま、ゆるしてやりなさい」

「ゆるさないもなんもないけど――そんなにすごいんだ……」

「うん」と、在義父さんが肯いた。

「当時流夜くんは高校生だけど、降渡くんと吹雪くんと、よく事件に首突っ込んで見事解決してくれてたなー。あのときは確か、流夜くんがアリバイ崩して、行方をくらませた犯人を見つけたのが降渡くんで、最後に捕まえたのが吹雪くん、だったかな」

「なにその役割分担みたいなのっ」

「基本的に三人ともに万能なんだけど、得意分野に特化するとそうなるんだ」

「……すごすぎて意味わかんない」

正直な感想だった。