「……誰かいてくれると、安心するとかじゃないか?」
「ああ、あるよね、そういうの」
咲桜はそう答えてから、何かを考えるように黙り込んだ。……また爆弾を考えてないだろうな? 少し心配になる。
「わかった。眠れなかったら私呼んで。抱き枕でも安眠枕でもなんでもなるから」
「……は?」
何がわかったんだ? また変なことを言い出した。そしてやっぱり爆弾じゃねえか。
「だからさ、私が傍にいることで寝れるんだったら、私傍にいるから。家族になる宣言の実行案だよ」
「………」
得意げな咲桜に言葉のない自分。純粋な顔で言わないでほしい。自分は大分邪だから。
……どうにかしてその辺りに気づかせないで回避したい。言葉を駆使する。
「……それは無理だろ。俺がここに帰ってくるの、明け方のときがほとんどだ」
……ろくに駆使出来てねえ。
「あ、吹雪さんとこ?」
「毎日行ってるからな」
吹雪のいる資料庫で、過去の事件を漁って、未解決の事件をお宮入りする前に解決する。
それが、俺が毎日していることだった。
お宮入りとは、迷宮入りのことだ。解決しないまま時効を迎えた事件のことを、『迷宮入りする』または『お宮入りする』と言う。
「んー、じゃあ学校から帰って来てからの、さっきみたいな時間は? 少しでも眠れたらいいでしょ」
「お前、さっきので困ってたんじゃないのか?」
素直な言葉に、素直に疑問が浮かぶ。
拳を撃つくらいに困っていたんだろうが。