「……すまなかった」

「謝らなくていいけど、さっきの寝惚け癖は非道い」

「……申し訳ない。……なにかしてしまっただろうか……」

「仕留められて離れてくれなかっただけですけど、ああいうことむやみやたらにすると危ない。気を付けるように」

「……わかった」

――前提、寝惚けたのなんてたぶん初めてだから、自分にどんな寝惚け癖があるのかわからない。

咲桜でよかった。いや、咲桜意外だったらその前提すら起きないのだが。

「父さんや夜々さんに怒られても構わないって言った時は、ぶっ飛ばして目を覚まそうかと思いましたよ。まだ流夜くんには死んでほしくないので」

「……そんなこと言ったのか」

自分の深層心理、怖―な。

しかし咲桜も、俺が起きるまで大人しくしていたとは……忍耐力あるな。

「寝不足なんですか?」

咲桜に一発喰らった額がまだ痛い。本気で拳ぶち込んできたよこの子。眉間って結構危ないのに。

咲桜はお茶を淹れなおしてくれていて、それから送っていくつもりだった。

「まあ……あまり眠れない体質みたいだ」

「そうなの? でもさっきかなり寝込んでたみたいだけど」

「………」

咲桜が腕の中にいたからだ。

やっぱり、そうだったらしい。ここまで決定的にわかれば否定する理由こそない。

咲桜がいてくれたら眠れる。けどこんなこと、本人に素直に言っていいものだろうか……?