また、一緒にいたい。そう願っていた。
また、抱きしめて朝陽の中にいたい。柔らかな咲桜のかおりみたいに―――
「……ん」
ぬくい。
なんだろう、あったかさがすぐ傍にある。その正体が知りたくて、瞼を持ち上げた。こんな大切なものがあるのか……。
「……さお?」
「……やっと起きましたか」
若干恨みがましい目で見てくるのは、咲桜だった。何度も願ったから夢が現実まで浸食してきたか。自分、相当重症だな。
「……なにしてる?」
「こっちの台詞ですが!? 絡みついて離れてくれないからなんも出来なかったじゃないですか!」
……え?
よくよく見れば、しっかり自分の腕が咲桜をホールドしていた。あー……?
「……すまなかった」
「本当ですよ。食器の片付け、全部自分でやってくださいよ。……あの、もう起きたんなら離してください?」
「いや、せっかくだから」
「なにが!?」
「せっかく咲桜がいてくれるんだったら夢でもいいかと」
「ガチでリアルですよ! まだ寝惚けてんですかっ!?」
また目を閉じると、咲桜から猛抗議があった。
「ほら、起きてください。あまり遅くなると在義父さんに怒られるし夜々さんにも心配かけるし、被害は流夜くんまで及びますよ」
急かす咲桜に、うーんと唸る。
「……構わない」
「構ってよ!」
まだ咲桜は怒鳴る。少しは落ち着け。咲桜の髪に口元寄せるように抱き寄せると、今度は冷えた応答があった。
「流夜くん。……起きないと二度とご飯作りませんよ」
「ん?」
ぱちり、と両瞼があがる。
「あれ、……咲桜? 本物?」
「さっきからずーっと私は本物でしかないです。目が覚めないようだったら眉間に一発いれましょうか」
「……すまん、頭が廻らない」
「えい」