「……遙音から、松生のことを聞いたことはないな」 「……そうなんだ」 咲桜は後ろ抱きにされて落ち着いて――いないが、なんとかまともに話すことが出来た。 遙音と松生、か……。あのときのことは、俺たちも少々失策だったと反省している。 では遙音は、松生のことは憶えていない……のだろうか。 どうやら咲桜は、松生が転校してくる前――遙音と友達だった頃に起きたことは何も知らなかったようだ。 俺も当事者とまではいかないが関わっているから、少し説明しておく。