「そうだな……見ていて飽きないな」

「へー?」

「飽きないついでに構いたくなる」

「……ほー」

「あと、言動がいちいち愛らしい。触ったままでいたくなる」

なんか咲桜に触れていると安心するというか……和んでしまう。

神経を尖らせる仕事が本業だから、気を張っていることが多いんだけど……咲桜の顔を見ただけで、それが緩む。

咲桜がここにいてくれる間くらいは傍にいたいんだけど、私事は山積みだ。

弟が手分けしてくれているけど、咲桜を構ってばかりいられないのも実情。

でも、帰れ、なんて言いたくない。時間と在義さんが許す限り、一緒にいたい。

俺が私事を始めると、咲桜は少し離れる。

人目に触れていいものではないことを、刑事の娘としても承知しているんだろう。

だから、ひと段落つくごとに充電させてもらう。

手を差し出すと、素直にその手を重ねてくれる。そのまま、なんとなくローソファに並ぶ。それが今の俺の、一番大事なものだ。

「……りゅう、それって……」

「あ?」

聞こえた降渡の声が震えていた。なんだ?

「いや、あのな、りゅう。それってまんまじゃねえか」

今度は生真面目な眼差しで見てくる。だからなんだというんだ。
 
……。

「まんま? ……ああ、やっぱりそうか……」

「あれ、気づいてんの? 自覚あんの?」

「ああ……最初からわかっていたけど……これってまんま在義さんの娘バカがうつったよな……」

……あ? と、一転、降渡が半眼になった。

吹雪は笑いをこらえているように顔を歪めている。

俺は、最近の悩みを口にした。

「いや、わかっていたんだ、最初っから。あ、最初って言っても見合い事件の日だけどな? あまりに在義さんが娘自慢するからそれがうつったんじゃないかって……。おかげで俺も咲桜を愛でるのが楽しくてしょうがない」

この問題で、このところ本当に悩んでいた。

……何故かいつもベラベラ五月蠅い奴らが何も言ってこない。