「咲桜、調子悪い日は来なくていいのに」

「……違いますよ」

「いや、ぶっ倒れるって明らかにおかしいだろう。むしろ俺が看病しに行くから呼べ?」

「………」

まだ目の回っている私はローソファに転がって、必死に流夜くんを見ないように背を向けていた。

その様子がやはり癇に障るらしい流夜くんは、傍を離れない。

色々言って自分の方を向かせようとするけど、私は意固地になって背もたれにかじりついていた。

「……俺から逃げないって言っただろ」

「……言いました」

「じゃあこっち向け」

「これは逃げてはないです。目を背けてるだけです」

「同じだろう」

「……流夜くんは自覚ないんですよ」

「………」

「流夜くんは劇薬みたいな人なんですよ。だから、今私が流夜くんを見たら致死毒を浴びるのと一緒なんです。だから見れません」

「………」

自分でも意味のわからないことを言っている自覚はある。うーん……なんと言って逃げ切るか……。

「……俺は一般の人間のつもりなんだが」

「一般人ではないです」

「咲桜、いい加減こっち向け。あと敬語使うな」

「せめてもの反抗です」

「……わかった」

その一言で流夜くんが引く――わけがなかった。

「わっ!? 今度はなに!?」

「目を閉じるな」