突然、突き放すようにそんな宣告をされた。

平坦な声に驚き、はっと顔をあげた。在義さんがキッと睨んでくる。

「お父さんと呼びなさい!」

「………」

……はい?

俺は、驚きが過ぎて声が出なかった。

ものすごく怒った顔で言われた……言葉の聞き間違いをしただろうか?

「言っただろう、流夜くんだったら婿でいいって。だからもう他人行儀にしなくていい。咲桜は『父さん』呼びだから、実はお父さんと呼ばれることには憧れがある」

「……はあ」

憧れ?

いまいち言い分が理解出来ないでいると、在義さんは更に続けた。

「さっきの状況の責任はとってもらう。流夜くん、君、今日からここで暮らしなさい」

「……はい?」

今度は音になった。しかし驚きが過ぎているのは変わらず、意味が理解出来ない。

「夜ごと君のアパートへ行くのも、暴漢痴漢の危険がないわけではないだろう。だから、君がここに住んでそういう手間をなくせばいい」

「いや――でもそれはさすがに……」

問題が大きすぎる気がする。まさか同居なんて。

そう言おうとしたが、在義さんが意味ありげに口元を歪めた。

「私は泊まり込むと言ってもいつ帰ってくるかもわからない仕事柄だ。私の目があった方が緊張して不埒な真似も出来ないだろう。少しは監視されて節度を学びなさい」

学びなさいも何も――……なんと返せばいいんだ?

在義さんのあまりな提案――命令に、戸惑うばかりだ。

咲桜と同じ家に暮らせるのは嬉しいが、いつどこでも在義さんの目を気にしなければならない。

……幸せなのか不幸なのかわからないな……。

「そういうわけだ。アパート引き払ってここへ来いとまでは言わないから、私を気にしつつ咲桜といちゃつきなさい」

「………」

彼女の父親にとんでもない要求をされた。