たたき起こされた俺は、床に正座させられていた。
安心の中で完全に眠り込んでいた頭ははっきり覚醒している。
やべえ。一番やばい人を怒らせてしまった。
「流夜くん」
「……はい」
言い訳――なんて無意味だ。黙って説教を喰らうしかないだろう。
在義さんは腕を組んで仁王立ちだ。
「確かに私は君と咲桜の婚約も認めている。そのまま恋人になろうと構わない」
「……はい」
そこは認めてくれるのか。だったらなんでこの前逃げたんだ。
……言いたかったけど、今は自分、そんなことを言える立場でない。
「だからってねえ、少しは私のショックを理解してくれ……責める気はないけど、お願いだから少しだけ気遣ってほしい」
一人娘を嫁にやるんだから……と、在義さんは今にも泣き出しそうな声だった。
……付き合うこと、本当に認めてくれるのか?
「大体、現状教師と生徒だろう。咲桜が卒業するまで待つくらいの覚悟はないのか?」
「あります」
「じゃあさっきのはなんだ」
「……言うなら、少し疲れることがあったので咲桜に逢いに来て傍にいたら安心して眠ってしまったというのが状況です」
嘘は言っていない。
実際、少し咲桜と話したら勝った安心感に負けて寝落ちしてしまった。
咲桜まで眠っているとは気付かなったけど……。
抱きしめていたから、より一層安心感が増したのだと思う。
咲桜は現在、ダイニングテーブルに隔離されていた。
何かを言いたそうにしているけど、在義さんの剣幕に口を挟めないでいた。
「在義さんがお疲れのところ、すみませんでした」
一度頭を下げる。帰って来て早々心配――怒らせてしまった。
「――在義さんなんて、もう呼ばないでほしい」