「だーいじょーぶ。悪用はしません。咲桜のとこ以外へは流出させませんから」
どうせ咲桜と素顔で写真撮ってないでしょう? とからかい口調で言われ、押し黙るしかなかった。
「……なら今度、咲桜の写真見せろよ」
「いいですよー。持ってきます。小学校から?」
「全部だ」
拗ねた口調で言っても、小学校からの知り合いだからそれ以前があったら思いっきり謎なのだが。
「つまんねーやきもち。おもしれー」
日義はカメラを仕舞いながら終始笑っていた。
最後に、「咲桜のこと、頼みますよ」と言い残して出て行った。
俺が知らない過去があるのは当然だ。そして過去はもうないもので、取り返すこともない。
ならば、これからの未来はずっと見ていたい。
改めて、強く思った。
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チャイムを鳴らそうとして、殺気――視線を感じた。
お隣のあの人だ。
隣の家の門扉の影からじとーっと睨んでいる。
「怖いです、朝間先生」
「珍しいですね、神宮さんがこちらへ来るなんて」
神宮さん。相変わらず咲桜が関わるときは『先生』とは呼ばない。
「咲桜に用があって来ました」
「用もなしに来てたら通報してました」
と、右手にスマホを見せるからやはり怖い。
「反対ですか、まだ」
「反対ですよ。咲桜ちゃんに近づく輩はみんな」
……今日も在義さん以上の親バカだった。
「在義さんには認めてもらってるんですけどね……」
ため息が出る。咲桜もその親も納得しているというのに。
「在義兄さんは咲桜ちゃんの言うことなら反対しませんからね。咲桜ちゃんの虫除けは私の役目です」
重症だ。