「なるほどですね。咲桜が本気になったのは一瞬疑いましたけど――ま、いっか」
言って、お茶を一気に飲んだ。
「あと、なんで格好変えてるんですか?」
「……警察事案に関わっているからだ」
これは言うまいと思っていたが、また妙な行動力を発揮されて首を突っ込まれたら厄介だ。それこそ事件に巻き込まれでもしたら。
「ああ、咲桜の親父さん警察ですもんね」
またもやすぐに肯いた。あまり深くは考えない性質なのだろうか。そこで、頼はにやっと笑った。
「ホンモノは、こっち」
トン、と頼が机を指で弾いたので、肯定の意味で肯く。学校での俺は、いわば作りもので、あるいは偽モノ。
その答えで満足したようだ。もう一度カップを手にして、軽く眺めていた。
「……咲桜の淹れ方ですね」
感慨深そうに呟き、「ごちそうさまです」と言って立ち上がった。
「日義。遙音のことだけど」
「はい?」
「あいつも結構大変な環境にある。あまり追い詰めないでやってほしい」
「それも警察関係ですか?」
からかうような口調だった。俺を試すような。
「そうだ」
「……わかりました。咲桜のためです。咲桜とのことも他言しません。代わりに先生、卒業式の約束は守ってくださいよ。サイコーの写真撮りますから」
「……ああ」
「じゃ、今日はおまけ」
シャッター音がしたので見遣ると、カメラを構えた頼がにやついていた。
「! 日義っ」