「……もったいない?」
「うん。笑満のそれは、笑満の中だけでしまっておくには綺麗だから。遙音先輩に見せつけてやりな。新しく同じ人をすきになってもいいじゃん」
「見せつけるって……喧嘩売るんじゃないんだから」
ぷっと、笑満が吹き出した。……緊張は少し融けただろうか。
「あんとき流夜くんに喧嘩売ったのは笑満でしょう」
「それはそうだけど……」
「私も笑満も結構、喧嘩上等だから性質悪いんだよ」
「自覚あるならいいじゃん。あー、なんだかすっきりした。ありがと、咲桜」
「それはよかった。すぐに告白しろとは言わないからさ」
「あたしだったら背中蹴飛ばして送り出すけどね」
「私もそうしようか?」
「咲桜はそのままでいい。そのままの咲桜をあたしは愛してるから」
「私も愛してますよ」
くすりと笑い合う。
笑満が友達でよかった。
その気持ちは、たぶん一生変わらない。
……笑満に一番大事な人ができても。
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「松生は知ってたのか……」
「遙音先輩の、昔のご近所さんなんだって」
流夜くんの部屋を訪れると、お風呂上がりだったらしく濡れた髪を拭きながら出て来た。取りあえず、私の心臓は決壊した。
煙を噴いて固まったのを、引っ張って引き入れられたのだった。
「そんな無防備な格好で玄関まで出ないでください!」真っ赤な私が怒鳴ると、「咲桜だったから出ただけだ。他の奴なら放っておく」とのお返事があった。私以外だったら堂々と居留守を使う気なのか。そう言って睨むと、「面倒だしな」と、関心のない返事だった。
……やっぱりどこかずれてるんだよなあ。