「あ?」

「咲桜にも言ったよな、俺。『彼氏の隣似合う』って。先生にも言ったと思うけど――二人が並んでいるの、俺にはすごく美麗に見えるんですよ。勿論、シンメトリーの二人が揃う奇跡にも感動しているわけですが。なので今、先生と咲桜を一枚の写真に収められるのは、俺にとっては願ってもない僥倖(ぎょうこう)なんです。――意味、通じてますかね?」

「………え、どういうこと?」

遙音が間の抜けた声を出す。今回のこと、遙音は一切知らない。とんだとばっちりだったな。

「俺はあなたに芸術的価値しか見ていません。安心してください」

「……すごい台詞だな」

「頼はあれで通常運転です……」

俺に答える咲桜の言葉も疲れ切っている。

「まあ、それは先生に関してだけです。咲桜の方は気になるな。長い付き合いですから」

「うっ……」

咲桜が息を詰まらせた。

「っつーわけで、先生とはどういう関係なんだ?」

「えっと……」

「婚約者」

「「!」」

咲桜が言いよどんでいるから、俺が答えておいた。咲桜と遙音が同時に俺を見てきた。

「……こんやく?」

「そう」

呆然と呟いた日義に言い、かけていたメガネを外した。

それを胸ポケットに押し込み、軽く前髪をはらう。

「これでいいか?」

素顔をさらした俺に、咲桜と遙音は瞳を見開いた。顔を見せることを拒んでいたからだろう。