「シンメトリーとしては咲桜と先生の方が最高のバランスなんですが――先生、撮られる気になりましたか?」
「なるわけないだろう。けど、遙音と咲桜の写真も許可しない」
冷えた声で断言すると、日義は一度大きく瞬いた。
「へえ――それが先生の地ですか?」
「悪かったな、性悪で」
「いえいえ――存分に良いと思いますよ。二面性は芸術です」
わけのわからない持論を展開して、嬉々とカメラを構える。
「俺を見るなー!」
遙音は恐怖に蒼ざめた声を出す。どれだけ追い詰められたんだ。
……完全に咲桜の背中に隠れてしまったのを、快く思わない偽婚約者もいるんだが?
「日義、俺と咲桜のこと気にしないって言ったよな?」
椅子から離れ、ついでに遙音が手を置いていた咲桜の肩をさらう。
引き寄せられて隣に立つ咲桜を見て、日義は微かに目をみはった。
「……言いました、が、それは先ほどの話です。今、先生が咲桜を抱き寄せているの、これに撮ったらどうなります?」
「消す」
端的に答えると、日義が息を呑んだ。
「咲桜とのこと、まだ知られるわけにはいかないんでな。武力行使でもなんでもしてやるよ」
暗にカメラごと壊すと言うと、日義は口元を歪めた。さも愉快そうに。楽しい恐怖対象でも見つけたように。
「……なにか勘違いしてません? 先生」