制服を直しながらぼやく。咲桜は答えを有していなかったようで、首を傾げた。
「日義の言うそれは身体のシンメトリーのことみたいだな」
「……シンメトリー?」
回転椅子を廻して、遙音の方を見る。
「人間の体躯(たいく)の構造は差があるからな。完全な左右対称は珍しいものだ」
「じんぐーがそれだってことか? 咲桜も?」
「そう……なのかな?」
確証のない咲桜は曖昧に返す。俺はため息をついて空(くう)を見た。
「正直、ぱっと見ただけでわかるものじゃない。俺も自分のことなんて知らねーけど、シンメトリーは確かに芸術家には格好のネタだろうな」
芸術評価、というものだ。
「えーと、なんだ? つまり、神宮と咲桜は身体が左右対称で、あのガキはそれを見抜いて写真に撮りたいと? 俺もそれに近いって?」
「先輩! ここですかっ? まだ撮り足りないですよ!」
「ぎゃーっ!」
飛び込んできたのは日義だった。
遙音は相当のトラウマでも出来てしまったのか、悲鳴をあげて咲桜の後ろに隠れた。
「お、おまっ、日義! なんなんだよお前! なんでいきなり写真とか騒いでんだよ! 俺が何したって言うんだ!」
遙音が何したというか、俺が生贄にしただけだ。
「お前怖いんだよ! 頼むから追いかけ廻すな!」
「では写真を撮らせてください。ちょうどいいから咲桜と一緒に」
「……また私を巻き込むのか」
咲桜は項垂れる。